たべものしょせきおでかけ

そういうはなし

京都聖地巡礼の旅〜1日目〜後編

龍安寺と西源院の精進料理&湯豆腐

 
 あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!おれは竜安寺前行きのバスに乗ったと思ったら、いつのまにか京都駅前行きのバスに乗っていた。な…何を言って(以下略)
 
 京都の市バスは複雑でわけがわからない。今自分のいる場所がどこなのかすらさっぱりだ。初心者に全く優しくない仕様で、まさかこれが一見さんお断りというものではないかと思わず考えてしまった。
 京都からの洗礼を受けつつなんとか立命館大学前まで辿り着いた我々であったが、そこから先のバスにはまだ時間があった。地図を見ると少し歩いたところにあるようだったので、そのまま散歩がてら龍安寺まで歩くことにした(しかしこれまた微妙に遠かった)
 
 さてこの龍安寺に行った理由は、お昼ご飯のためだ。お寺の中に「西源院」という庭園を眺めながら湯豆腐を食べれる場所があると聞いた我々は、ここへ行こうと決めていたのだ。
 本来であればお参りした後に向かうべきなのだろうが、お腹がすきすぎてどうしても我慢ができず、申し訳ないと思いつつも先にご飯をいただくことにした。
 
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 龍安寺はとても広いお寺だった。中央に非常に大きな池があり、池の周囲には桜や紅葉の木がたくさん植えられている。きっと春と秋に訪れたら、素晴らしい光景に出会えるのだろうと思う。
 
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 通常ルートを逆走してたどり着いた西源院は、門構えがいかにもな感じで心が躍る。手入れの行き届いた庭の中を進みながら期待値はどんどん右肩上がり。
 ちょうど混雑する時間帯より少し前だったこともあり、今回は運良く窓際の席に座ることができたので、食事が来るまでしばし正面の庭を眺めていた。
 
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 鳥が多い寺なのだろうか、庭には鳥の置物がたくさんあった。また山鳥が何匹か木に留まって羽を休めている。のんびりとしたいい場所だった。
 そしてようやく、お待ちかねのお食事タイム!頼んだのは精進料理と湯豆腐のセットである。
 
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 精進料理は少し濃いめの味付けで、ご飯にとてもよくあった。湯葉と野菜の煮物はよく味が染みこんでいるし、山菜は歯ごたえがよく、大根の甘酢漬けと湯葉の練り胡麻和えがいい感じで味にバリエーションを持たせている。そして何より胡麻豆腐だ。柔らかく脂の多いトロッととろける胡麻豆腐。胡麻の香りの後からはワサビのツーンとした刺激が追ってくる。あまり食べる習慣がない食べ物なので、美味しくてたまらなかった。

 そして七草湯豆腐は……なんというか、でかい。2人前のはずなのに普通の土鍋で出てきた。食べきれるだろうか、という不安に駆られた。さっそく出汁醤油を大根おろしとしょうがなどの薬味が入った器に入れ、柔らかい絹豆腐を掬って入れてみる。そして箸を差し込み、一口ほおばる。
 ふおおおおおおおおおおおお!!!
 なにこれ~~~お豆腐めっちゃおいしい~~~!じゅんじゅわぁと出てくる汁と、口の中に入った瞬間消えていくお豆腐。醤油は出汁がきいているし、薬味の刺激が食欲をそそる。めっちゃうめ~~~と、美しい庭など完全無視でものすごい勢いで食べ始める花より団子な我々。食べきれないだろうと思っていた鍋は、あっという間に空になった(私に至っては汁を出汁醤油で味付けして啜っていた。おいしかった)

 

 さて、時間もあまりないのでお寺のほうへと移動を開始する。龍安寺世界文化遺産だけあってか、外国人観光客の姿が多く見られた。なおこのお寺で有名なのはこの枯山水

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 水はないけれど線で水を表現しているとか?こういったものに欠片も興味のない私ではあるけれど、とにかくすごいんだなぁということはよくわかった(バカ)それよりも私が心惹かれたのはこちらの方丈の襖である。
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 龍(切れてるけど)と朝鮮の金剛山が3つの部屋にまたがって襖に描かれていて、かなり圧巻の光景であった。
 
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 また散策中に侘助椿という椿を見つけた。看板に書いてある文字から朝鮮出兵時に秀吉が持ってきたのかと思ったが、後から調べたら持ってきたのは侘助という人物で、それを秀吉が絶賛したのだとか。ザウリさん嘘言ってごめんね。
 
 これ以外にも徳川光圀が寄贈したつくばいがあるなど、見どころは多い。個人的には広すぎる池が気に入っている。カモと鵜と鷺がいた。かわいかった。
 
 

金閣寺

 次に向かったのは金閣寺である。正式名称は鹿苑寺。言わずと知れた足利義満のお寺である。だが私は室町時代にあまり興味がない。ここには歴史関係ではなく「三島由紀夫金閣寺」の聖地としてやってきたのであった。
 
 金閣寺は修学旅行先としても選ばれる率が高いお寺No.1であるが、私は一度も来たことがなかった。写真を見るととても美しいように思える。しかし行ったことのある人に聞いてみると、綺麗なお寺だと言う人もいれば、思ったほど綺麗じゃなかったと言う人もいる。綺麗なの?綺麗じゃないの?その回答を求めて読んだ金閣寺で私は余計混乱に陥っしまう(しかも三島先生にどハマりする羽目になった)この目で確かめてみたいと、長い間そう思っていた。

 大量の観光客に混ざりながら「美しくなかったら燃やすわ~」などと不穏な話をしつつ向かう。金閣寺の主人公が娼婦の腹を踏みつけたであろう場所を通り抜け(ちなみにここ私の一番好きなシーン)、入園料を払う。するとなぜか御札が付いてきた。い、いらねぇ……こういう取扱いに困るものを安売りして……どうすればいいっていうの……と思っていたら近くに不要な場合の御札を入れる箱があった。まるでゴミ箱のようで笑ってしまった。

 中国人団体客をかき分けながら先へと進んでいくと、ようやく念願の舎離殿の姿が現れる。
 
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  私は思わず息を飲んだ。厚い雲が日の光を遮断しているせいで辺りは少し薄暗く、周囲の山々や樹木が深い色へと落ちていた。にもかかわらず、その中央にそびえ建つ舎離殿は美しい黄金色に輝いている。更には深緑色の池にも見事に色が移り込んでいるではないか。とても美しい光景だった。
 
 よかった。燃やさなくてすんだ。と、小さく安堵したのは内緒だ。

 その後は義満の盆栽の松を見たり(結構でかかった)、お高めツアーの後ろをついて歩きちゃっかり説明を聞いたり、私と鶴川が休日に出掛けもせず金閣寺を眺めていた場所はここかなぁと物思いにふけるなど、満喫度はかなり高かった。

 また金閣寺の中にあるお茶屋さんにて小休憩もする。
 
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 茶菓子に金閣寺が浮き出ており、更には金箔が付いている。なんということだ!金閣寺は燃やさずに済んだけど、かわりに食べてしまった!中に入ってた塩大豆がとても美味しかったです。
 
 

●本能寺跡と信長茶房

  次に我々が向かったのは本能寺……の跡地の方である。現在本能寺は本能寺の変後に建てられたものだそう。宗三左文字が燃え盛る炎の中でその美しさを散らした場所に行くのならば、やはり跡地であろう。(なお信長が本能寺に義元左文字を持って行ったかどうかは諸説ある)(個人的には持って行っててほしい派です)(燃えたという点と、そのあと秀吉が探し出したという点を踏まえて)
 
 さて、優秀だけどハゲ散らかしてたせいで不本意に弄られキャラになってしまった部下の怒りがついに爆発し、モラハラブラック上司とその一派をぶっ殺すという修羅場が起きた場所の現在の姿がこちら。
 
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  場所が住宅地のど真ん中すぎて一瞬見逃してしまった。真後ろは普通のアパートだ。本能寺の変の場所に建つアパートなんて……なんだが呪われそうだから住みたくないなぁと失礼なことを考えてしまうあやめであった。
 
  本能寺跡からほどなくした場所に「信長茶寮」という店がある。旅行の計画中、ザウリさんから「HP見てもよくわからないんだけど、信長の慰霊碑がある場所があるんだよ」と教えてもらったのがここだ。私もHPを確認してみたが、確かによくわからない。信長と漫画のコラボ?という割には漫画は北斗の拳で有名な原先生のみピックアップしているよう。いろいろなイベントもやっているようだが……???と謎が深まるばかりであった。行って確かめてみよ~!と向かったところ
 
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  住宅街にいきなり現れる面白そうな建物。蒼天の拳(でいいのかな?)ののぼりと自販機の存在感たるや如何とも表現しがたい。「めっちゃ信長~www」と草不可避状態になりながら我々は中へと進んでいく。入場料を払い慰霊碑のある地下へと進むと……
 
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 なんかある。
 
 え?石?石だよね?と疑問が頭の中を埋め尽くしていく。ちょうど近くに説明書きがあったので読んでみた。
 
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 つまり、傍若無人信長様が部下たちに石を見せて「これ俺だと思えよ!」と安土城のてっぺんに置いてきた出来事をリスペクトして、安土城跡から石もらってきたってことか。信長よ、わかってはいたがとんだジャイアンだな。てかまた石かよ。忠興といい信長といいお前ら石好きだな。当時のDQNは石持つのがステータスなの???
 
 ちなみに上の写真に写りこんでいる本能寺の変の焦土だが、売店にこの焦土入りのお守りが売っていた。もしかしたら薬研藤四郎の残りカスや武将の残りカスが手に入るかもしれないので、本能寺(で死亡した人の)クラスタにはぜひご購入をオススメする。
 また近くには信長の所有していた刀の模造刀(長谷部と薬研がいた)があったり、絵馬置き場もあった。絵馬にはめっちゃ薬研と宗三がいた。皆様さすがです。また入口で赤・白・黄のいずれかの丸ロウソクをいただける。それに火を灯し慰霊碑のある池に浮かべると、運気がアップするようだ。私は金運の黄色を選んで放流した。
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 なんだろう……本能寺に火を放ってしまった……絶対呪われる……。
 
 

五条大橋松原橋

 

  今回宿泊した宿は五条にある。ラッキーなことに、宿から歩いて1分のところに五条大橋があった。五条橋と言えば、弁慶の泣きどころで有名な「牛若丸と弁慶伝説」の地である。五条大橋の手前には二人の対決シーンのかわいらしい像も建っているらしい。
 チェックイン後すぐに、その像を求めて行ってみたのだが……おかしい。像が見つからない。既に辺りは真っ暗で、いったいどこにあるのかさっぱりわからなかった。橋を一往復しても見つからなかったので早々に諦めることにした我々は、次へと向かった。
※翌日普通に見つけました。めちゃ分かりやすい場所にありました。バカだった(写真失念)
 
 さて本日最後の目的地はこの松原橋である。
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  実は先程の五條大橋、近年に建てられた橋だそうで、牛若と弁慶が対峙したのはこちらの松原橋(元五条橋)とのこと。車一台が通れる程度のとても小さな橋だった。
 20年前に義経に一目ぼれして歴史沼に頭からダイブした私にとって、ここは最大の聖地でもある。「刀おいてけー!さもなくば切る!」「やってみろこの木偶の坊!」的なことを言い合いつつ、我々は橋を往復する。義経が立っていたであろう手すりの部分を触っては「ここでヘドバンしたら義経踏んでくれるかなぁ(※バンドパロ)」と妄想するなど、ものすごく楽しかった。
 
 
 さて、本日の聖地巡礼はこれで終了。
 以下は聖地とは関係ない蛇足的な話である。
 
 
*補足
 松原橋からの帰り、お腹が空いた我々はふらりと近くにあるおばんざいのお店「くろこ」さんに入った。カウンターのみの店で、中にはどう見ても常連の地元客しかいない。やばいところに入っちゃったかな……と思うも、さすがに出ていくわけにもいかず案内してもらう。しかしこれが大当たりであった。
 元俳優、元女優のご夫婦が営んでいるそのお店はとてもアットホームで、冷やかし客にも近い私たちを温かく受け入れてくれた。ちょこちょこ注文内容を忘れる気のいいママが「おまっとさんです~」と出してくれるおばんざいはどれもおいしい。無口でとっつきにくそうなお父さんは実はとても優しくて、「食べてる?」とちょいちょい顔を出しては気にしてくれる。偶然隣に座っていたご年配の女性の方は十年以上ここに通っている常連さんで、とっても素敵なお話を私たちにしてくれた(あと焼き銀杏くれた※写真参照)
 
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 ずっと喋って笑っての楽しい2時間だった。遠い地に来てこんな出会いがあるなんて、私たちは運がいい。御朱印の効果がさっそく発揮されたかのだろうか。すごいな。
 
 またその日泊まったお宿は「パンとサーカス」さんというゲストハウスである。
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 町家をものすごく前衛的でアーティスティックに改造したお宿だった。中にはかっぴょいい絵が至る所に飾ってあり、また椅子などの調度品もアンティークな雰囲気でとても素敵だ。階段には私とザウリさんの大好きな古い植物図鑑の絵が飾ってあり、一気にテンションが上がる。また喫煙所は奥まった場所にあり、行くたびに探検ごっこをしているようでワクワクした。また1階はカフェバーになっており、ここのディスプレイもかなり凝っている。私のようなサブカルチャー気味の人はかなり心躍る仕様であった。お酒はくろこさんでいただいてしまっていたので、今回はコーヒーをいただいた。おいしかった。
 二階が寝室になっており、共同の部屋と、男部屋、女部屋に分かれている。二段ベッドになっていて、ベッドも布団もふかふかだ。シャワーを浴びたあと少しだけ喋っていたのだけれど、旅の疲れから早々に限界を迎えた我々は、すぐに夢の国へと旅立っていった。
 
 
(2日目に続く)